海底熱水噴出孔の発電プロセス

1970年代にガラパゴス海嶺の深海底で海底熱水噴出孔が発見されたのち、200˚C以上の高温の熱水が噴出するブラックスモーカーが見つかっています。高温で還元的な熱水と低温で酸化的な海水が混合することで、硫化物や硫酸塩の微粒子が形成し、周囲にチムニーと呼ばれる構造物を作ります。このようにして形成される海底熱水鉱床は、日本近海にも多く存在し、金、銀、レアメタルなどの資源として期待されています。

一方、海底熱水噴出孔の周辺にはカニや貝などの特殊な生態系が発達しています。太陽光が届かない深海底では、酸化還元反応やpH、熱などがエネルギーの供給源になっていると考えられていますが、あまりよくわかっていません。チムニーを構成する硫化物は、半導体であり、単に電気を通すだけでなく、熱を電気に変える熱電変換性能を持っています。当研究室では、この数年、研究航海に参加して、伊豆・小笠原海域の深海底から硫化物チムニーを採取し、その鉱物学的、電気化学的な性質を調べて、硫化物チムニーが成長していく過程で、発電性能を発現する、という仮説を調べています。もしかしたら、そのような深海底のエネルギーを有効利用できる技術につながるかもしれないと期待しています