宇野助教,岡本教授,卒業生の小梁川さん,笠原さんの論文がプレスリリースされました!
【発表のポイント】
- 岩石が水や二酸化炭素を消費する際の体積膨張反応を、MgO 焼結体をもちいた室内実験で再現。
- 反応により岩石に破壊が生じ、流体の流れが加速されること、水や二酸化炭素が持続的に固定されることを世界で初めて実験的に明らかにした。
- 反応により岩石が破壊されるためには、流速に対して反応速度が十分に大きい必要があることを明らかにした。
- 地球のグローバルな物質循環の解明につながるほか、大気の二酸化炭素除去技術への応用が期待される。
【概要】
岩石が水や二酸化炭素を消費する吸水反応や炭酸塩化反応は、地球の環境や物質循環を支配する主な反応です。これらの反応は数%から数十%もの大きな固体の体積膨張を伴いますが、地下深部の高い圧力下でどのように岩石が膨張しながら反応が進むのかはわかっていませんでした。
東北大学大学院環境科学研究科の宇野正起助教らの研究グループは、体積膨張を伴う岩石-流体反応によって地殻・マントルに破壊が生じ、それによって流体の流れを加速させることを世界で初めて実験的に示しました。さらに、破壊や流体流れの加速が生じるためには、反応の速度が流体流れの速度に比べて十分に大きい必要があることを突きとめました。これらの知見は、固体地球内部への水や二酸化炭素の固定メカニズムの解明につながるほか、地下開発における流体流れの制御、二酸化炭素鉱物固定技術への応用が期待されます。
本成果は、2022 年1 月14 日、米国科学アカデミーが発行する科学誌Proceedings of the National Academy of Sciences に掲載されました。
図1 天然岩石にみられる化学反応による岩石破壊。(A)かんらん岩の吸水反応(蛇紋岩化)により生じた蛇紋岩ブロック(サン・アンドレアス湖、カルフォルニア)。蛇紋石(リザダイト)の脈(淡緑色)に切られ、多面体状になっている。(B)部分的に蛇紋岩化したカンラン岩の偏光顕微鏡写真(クロスニコル)(レッドウッド蛇紋岩体、カルフォルニア)。網目状に発達したブルース石の脈に沿って反応が進行している。(C)かんらん岩や蛇紋岩が炭酸塩化して生じた、シリカ−炭酸塩岩(サン・ノゼ,カルフォルニア)。白い石英脈が網目状の亀裂を充填している。
【関連リンク】
プレスリリース本文:https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2022/01/press20220118-01-reactions.html
PNAS: https://doi.org/10.1073/pnas.2110776118