岡本教授と坂下福馬さん,高エネルギー加速器研究機構の吉田一貴さん,Dandar Otgonbayar助教,東京大学の宇野正起准教授のMgO水熱反応実験に関する論文がGeochimica et Cosmochimica Actaから出版されました.
かんらん岩の蛇紋岩化や炭酸化を含む揮発性物質を消費する広範囲にわたる反応を制御する主要なプロセスとして,近年の数値シミュレーションやアナログ実験により,反応速度が流体流動速度よりも速い場合には,体積増加反応によって破壊が生じさらなる反応が促進される”反応誘起型破壊”が生じている可能性が示されてきました.しかし反応ー変形ー流体流動ー破壊挙動の実験時リアルタイム同時計測が実施されておらず,流体流動-反応-破壊のフィードバックシステムが不明でした.そこで本研究では,変形・流体移動・破壊挙動の測定が可能な,新開発の実験装置を用いて,ペリクレース焼結体(MgO)の水和反応(MgO + H2O → Mg(OH)2,体積膨張率:+119%)に関するバッチ式反応実験および流通式反応実験を行い,体積増加反応の進行に伴う浸透率,反応進行度および破壊の時間的変化を調査しました.その結果,MgO水和膨張反応に関する詳細な反応進行プロセスと差応力下での新たな力学挙動が明らかになりました.本研究で得られた知見より,反応誘起型破壊はリソスフェアの空間的に異方な弾性特性に関連する自己誘起型の差応力によって強く促進されること,そして不透水性のマントルかんらん岩の蛇紋岩化および炭酸化中に大規模な破壊が発生し得ることが示唆されます.
Atsushi Okamoto, Fukuma Sakashita, Kazuki Yoshida, Dandar Otgonbayar, Masaoki Uno
“Self-induced differential stress and cascading reactions, fracturing, and permeability enhancement triggered by volatile-consuming reactions, Geochimica et Cosmochimica Acta