岩石をよくみると綺麗な模様がみえます。このようなパターンは、反応や破壊や流体移動が伴って岩石が形成されるプロセスを凍結した「物理的な化石」とみることができます。この「かたち」から「うごき」を解読するために、私たちは数値モデルを用いて研究します。

地球内部のダイナミックな現象や岩石の形成過程を直接的に観察することは困難です.このため,私たちは,数値シミュレーションによってこのような組織を実際に作り出し,現象を支配するパラメータやその時間発展を理解します。下の図は,粉体工学などでよく用いられる離散要素法というシミュショーンに岩石形成の基本過程である,化学反応,流体流動,破壊現象を組み込んで,海底のマントル岩石が水を吸収する「蛇紋岩化反応」を再現したものです (Shimizu & Okamoto, 2016 https://doi.org/10.1007/s00410-016-1288-y).

しかし,シミュレーションが正しいかどうかをどう判定すればいいのでしょうか?「なにが似ているのか」という特徴量を抽出したり、モデルを選択すること自体が非常に難しく、今後、発展させていくべき課題といえます。

蛇紋岩化作用によって生じる亀裂パターンの離散要素法のシミュレーション (Shimizu and
Okamoto, 2016)

高圧で安定なダイヤモンドのように地表にはしばしば準安定鉱物が現れます.温泉などから鉱物が析出するときに準安定なものが初めに析出して,より安定なものへと変化することが知られいます.下の研究では,このプロセスを統計物理モデルであるPotts model を使って、モンテカルロシミュレーションをしたもので,そのエネルギー状態と発達する組織の関係を明らかにしています。Okamoto et al., 2015 Phys Rev E https://doi.org/10.1103/PhysRevE.92.042130

ここ数年多くの場面で「AI」「機械学習」という言葉が聞かれる様になってきました。それもそのはず。機械学習の分野は「ディープラーニング」という技術の進歩によって第3次AIブームが巻き起こったからです。

機械学習は,今までも案外身近な場所に存在してきました。例えば,今このHPを開くために使ったであろうGoogle検索やショッピングサイトの類似商品の推薦であったり。そして最近では機械学習の一つである強化学習を用いる事で,プロの棋士さんにコンピュータが勝つというニュースもありました。

機械学習のブームに伴ってプログラミング言語の開発も進み,以前に比べて非常に使い易くなってきました。その中で,地球科学の分野においても機械学習を適用した研究が増えてきています。

単に機械学習というと「スーパーハイテク全知全能マシン」感がありますが,機械学習の難しい所は「何に対して使うのか」という所です。

地球科学分野においても,目的を何にするか,どんなデータを使うのか,そんな基本的な所が大切です。岡本・宇野研究室では,機械学習を用いて地殻内の流体活動を明らかにしようとしています。

機械学習を用いた地殻ーマントル境界の岩石ー水相互作用の反応速度論的解析

地殻やマントルのなかを熱水が循環すると,様々な鉱物が溶解して,析出する複雑な反応が起こります.この現象を水熱実験で再現し,生成した鉱物の空間分布を機械学習を用いて解析してそのカイネティックパラメータを推定しました.複数のパラメータを同時推定する際に,局所解に陥ることなく厳密解にたどり着くために,レプリカ交換モンテカルロ法によって解の探索をおこなっています.また,複数のモデルから交差検証によって最も妥当なモデルを選び出しています.Oyanagi et al. (2021) Geochimica Cosmochimica Acta https://doi.org/10.1016/j.gca.2019.11.017

機械学習を用いた多次元元素情報から読み解く岩石ー流体反応における物質移動解析

地圏環境を構成する岩石、土壌、流体は多くの元素からなる化学組成をもつ、ビッグデータといえます。岩石が流体と反応すると、多くの元素が加わったり、溶脱したりします。これは、地球のグローバルな元素循環を支配し、金属資源の形成などにも深く関わっています。地球内部で反応した岩石(変成岩や変質岩)はそのような元素移動の情報を持っています。しかし、元素の

移動を議論するためには、「元の岩石の化学組成」を知る必要がありますが、これはなかなか簡単なことではありません。下の研究では、海洋地殻を構成する玄武岩の既存の研究をコンパイルしたビッグデータを勾配決定木という機械学習の方法を使って学習させ、変質した岩石から元の岩石の化学組成を復元し、これまでできなかった天然岩石の物質移動を定量的に見積もる方法を提案しました。この手法を適用・発展させ、海洋底や沈み込み帯における元素移動を研究しています。Matsuno et al., 2022, Scientific Reports https://doi.org/10.1038/s41598-022-05109-x

岩石掘削コアのX線CT画像に対するスパース超解像

地下を調べる1つの方法の有効な方法として、X線CTによる内部の3次元的構造の解析です。X線CTはもともと医療用などに開発されてきましたが、現在、地下の掘削コアに対して汎用的に行われるようになっています。また、最近では、放射光施設を利用して、解像度が50nm程度のなのスケールの解像度をもつ装置もあります。しかし、大きな試料を撮像するときは解像度が粗すぎ、高い解像度で撮像するときは試料全体のサイズを小さくしなければいけない、という問題があります。したがって、ナノスケールの鉱物粒子の境界のスケールから、kmスケールの大規模地質構造までをつないで理解するためには、この「スケールの壁」を超える必要があります。この研究では、機械学習の1つであるスパースモデリングを用いた超解像を岩石コアに初めて適用しました。人間の脳では、自然画像は少数の基底画像の重ね合わせとして認識されています。スパース超解像では、高解像度の画像で学習した少数(スパース)な規定を解像度に展開することで、超解像度します。この選ばれた基底画像は岩石の特徴量を抽出しているともいえます。Omori et al. 2023 Scientific Reports https://doi.org/10.1038/s41598-023-33503-6