蛇紋岩化作用と水素の発生

海洋底は地殻が5km程度と薄いために、海洋地殻を通過して海水がマントルと反応します。このマントルの岩石が水を吸う反応を蛇紋岩化作用と呼びます。実は、この蛇紋岩化作用は様々な方面で大きな注目を集めています。その1つは、この蛇紋岩化作用によって、水が還元されて、水素、または二酸化炭素と合わさってメタンが発生する点です。1970年代以降、深海底においていくつもの熱水噴出孔が発見されて、そこには特殊なエコシステムが形成されていました。つまり、蛇紋岩化作用によって作り出された水素エネルギーを使って、海底の地殻内部の生態系が維持されており、固体地球と表層環境・生命圏を結びつけています。また、蛇紋岩は、火星や木星の衛星などでも存在していると考えられており、地球史における生命の発生や、他の天体での生命の存在をとく鍵を握ると考えられています。

しかし、実際にマントルがどれくらい水を吸うのか、すなわち、水素がどれだけ地下から発生しているのかはよくわかっていません。私たちは、この海洋底の蛇紋岩化作用を天然の調査、室内実験、数値シミュレーションなどで明らかにしようとしています。

蛇紋岩はCO2を固定する能力が最も高いことでも知られています。緑色が蛇紋岩、白色が炭酸塩脈で綺麗なので壁材としてよく使われています(EGU, ウィーンにて 2019)
地殻ーマントル境界を明らかにする、国際的なオマーン掘削プロジェクトに参加しました。 掘削船「ちきゅう」でのコア記載 2018

高エネルギー加速器研究機構の放射光施設で蛇紋岩の中のナノスケールの空隙、マグネタイトの分布と蛇紋岩中のFeの価数を調べました。岩石中のFe(II)がFe(III)に酸化されるときに水素が発生します。