数値シミュレーション

岩石をよくみると綺麗な模様がみえます。このようなパターンは、反応や破壊や流体移動が伴って岩石が形成されるプロセスを凍結した「物理的な化石」ということができます。

地球の動きや岩石の形成過程を直接的に観察することは難しいです.このため,私たちは,数値シミュレーションによってこのような組織を実際に作り出し,現象を支配するパラメータやその時間発展を理解します。下の図は,粉体工学などでよく用いられる離散要素法というシミュショーンに岩石形成の基本過程である,化学反応,流体流動,破壊現象を組み込んで,海底のマントル岩石が水を吸収する「蛇紋岩化反応」を再現しています.

しかし,シミュレーションが正しいかどうかをどう判定すればいいのでしょうか?「なにが似ているのか」という特徴量を抽出したり、モデルを選択すること自体が非常に難しいところと言えます。

蛇紋岩化作用によって生じる亀裂パターンの離散要素法のシミュレーション (Shimizu and
Okamoto, 2016)

高圧で安定なダイヤモンドのように地表にはしばしば準安定鉱物が現れます.温泉などから鉱物が析出するときに準安定なものが初めに析出して,より安定なものへと変化することが知られいます.下の研究では,このプロセスを統計物理モデルを使ってシミュレーションし,そのエネルギー状態と発達する組織の関係を明らかにしています

機械学習

ここ数年多くの場面で「AI」「機械学習」という言葉が聞かれる様になってきました。それもそのはず。機械学習の分野は「ディープラーニング」という技術の進歩によって第3次AIブームが巻き起こったからです。

機械学習は,今までも案外身近な場所に存在してきました。例えば,今このHPを開くために使ったであろうGoogle検索やショッピングサイトの類似商品の推薦であったり。そして最近では機械学習の一つである強化学習を用いる事で,プロの棋士さんにコンピュータが勝つというニュースもありました。

機械学習のブームに伴ってプログラミング言語の開発も進み,以前に比べて非常に使い易くなってきました。その中で,地球科学の分野においても機械学習を適用した研究が増えてきています。

単に機械学習というと「スーパーハイテク全知全能マシン」感がありますが,機械学習の難しい所は「何に対して使うのか」という所です。

地球科学分野においても,目的を何にするか,どんなデータを使うのか,そんな基本的な所が大切です。岡本研究室では,機械学習を用いて地殻内の流体活動を明らかにしようとしています。

機械学習を用いた地殻ーマントル境界の岩石ー水相互作用の反応速度論的解析

地殻やマントルのなかを熱水が循環すると,様々な鉱物が溶解して,析出する複雑な反応が起こります.この現象を水熱実験で再現し,生成した鉱物の空間分布を機械学習を用いて解析してそのカイネティックパラメータを推定しました.複数のパラメータを同時推定する際に,局所解に陥ることなく厳密解にたどり着くために,レプリカ交換モンテカルロ法によって解の探索をおこなっています.また,複数のモデルから交差検証によって最も妥当なモデルを選び出しています.