南極 セール・ロンダーネ山地

ー地殻流体と地震活動の痕跡ー

氷河で覆われた南極大陸の内陸には,人類がほとんど足を踏み入れたことのない山地が存在します.これらの山地は約5億年前のゴンドワナ大陸の形成によって生成した高温変成岩です.氷河で削られた急崖には,地殻深部の流体活動が克明に記録されています.最近の解析によって,これらの岩石ー流体反応帯は,プレート境界断層に沿った流体活動に起因することが明らかになってきました.

岡本研では,こうした岩石ー流体反応帯から流体活動の継続時間,流体圧や浸透率(岩石の中の水の流れやすさ)など水のダイナミックな流れを明らかにする手法を開発しました.岩石ー流体反応帯には,数十時間〜数年程度の非常に短い時間スケールの流体活動が記録されていることが明らかになりました.こうした時間スケールは,現在,私達が沈み込み帯で観測している地震活動に関連した流体活動と一致します.従来は地震波観測から間接的に推測されてきた流体活動について,流体圧や浸透率などの支配パラメーターを岩石から直接的に制約できるようになってきたのです.

南極の岩石ー流体反応帯の解析例.岩石記録から非常に短い流体活動をみれるようになってきた.
岩石記録から流体圧や浸透率など地下の流体活動の支配パラメーターを直接的に制約できるようになった.